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「化粧大丈夫でした……ってあれ? 莉花さんは?」 戻ってくると綾海しかいなかったから、咲良が不思議そうな顔をしていた。 「仕事が入って帰ったって」 綾海が無理に笑顔を作ったのになぜだか咲良が不安そうな顔をして、恐る恐る尋ねてきた。 「あれ?綾海ちゃん、もしかして莉花さんと何かあったの?……」 「え?……」 「なんだか辛そうな笑顔だから」 咲良が心配そうに綾海の席の目の前でしゃがみ、そっと両手を包み込んだ。なんだかその温かさに心の中が満たされるような気分になる。 ねえ、咲良はわたしのことどう思ってるの? 本当は嫌いなの? 今日も来たくなかった? そう聞こうしたけど、とても怖くて聞けなかった。そんな綾海に気づかず、咲良が続ける。 「莉花さん忙しくて帰っちゃったのは残念だけど、今日は会わせてくれてありがと! 綾海ちゃんのおかげですごく素敵な思い出になったよ!」 周りに花でも咲きそうなくらい満面の笑みを咲良が浮かべていた。この笑みを疑う必要なんてあるのだろうか?  咲良はそんな器用な演技ができる子ではないのに。
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