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「えっ!?」
「イカリングだよなあ。はあ。暇なあんたらに代わって、これからジュース買ってきてやる自分が腹立たしい、イカリング」
「!?――☆○△X!」
彼らは急に怒り出した。その言葉の意味はあまりに汚すぎてわからなかった。
「はあ。イカリング。うるさいなあ、もう。どうでもいいから、こーしー買う金渡して。昼休みが終わる前に買ってきてあげるからさ」
「!!――☆○△X!?」
言葉が汚すぎて、何を言っているのかわかんない。こういうことは多かった。いちいち聞き返したくもない。
汚い言葉をうまく聞き位取れるようになるため、実はこういう状況は常に録音してきたから。後で聞き返せばいい。
僕は録画機能をオンにしたままのスマホをポケットの中から取り出した。うん。ちゃんと機能は動いている。
「なっ、何を録っていやがる?」
「はあ? この場の状況。いつも録画からの音声再生で、その時一体何が起きていたのか後から確認しているんだ」
「そっ、それをどうしようって言うんだ?」
「はあ。だからあ、君たちが一体何言ってるのか全然わかんないことが多いし、後でわかる人に聞いてもらおうかとも思って。そろそろメモリーが足りなくなってきたなあ。一度、誰かに――」
「おい!」
怒り顔の高田は僕のスマホを取り上げようとした。おっと。そうはいかない。その姿もばっちに録画できちゃったというね。
「そんなの外の奴らに公開してみろ。俺たちがどうなるのか、迷惑どころじゃすまないぞ」
「ここまでいじめの録画を溜め込んでしまった自分自身に怒りを感じる」
「だだだだったら消しー、いますぐ!」
「僕はね。怒っているんだよ。自分自身に。どうしてここまでいじめの嫌がらせを受けた映像を溜め込んでしまったのかってさあ」
「い、いじめじゃねえから。友達付き合いの、スキンシップだから」
「そうなの? じゃあ、他の人に見せても問題ないよね。僕が僕へ向ける怒りも、それで収まる」
「だーかーらー」
「こう、しつこいことをされると、僕は自分自身に怒りを感じ続けてしまうよ。イカリング」
「なんださっきから、イカリングって。食いたいのか? わかった。買ってきてやるよ」
高田たちは急に腰が引けた態度になった。
遠巻きに僕たちを眺め見ていた他のクラスメートたちから薄い笑いが起こってもいた。
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