イカリング

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 ここで、僕ははっと気づいた。  さっきの僕の発言力。すべてはイカリングという言葉から来ているのか。  自分で自分を怒る。これこそが、行動力につながるのだ。  何かをどうにかしたかったら、自分を怒る! 常にそう怒り続けろ! 怒りの進行形! 「イカリング!」 「またそれかよー。こいつ、もうわけわかんねーよ」  イカリングって言葉の意味は高田たちにはわからない。  でも僕には、浜崎の言ったことのすべてが理解できた。 「こーしー、買ってくるから。お金」 「もういいよ」 「よくない。それじゃ僕も君たちも今の怒りが収まらない」 「しつっこいぞ」 「君たちが言うなよ。イカリング」  話は平行線のまま。 「こいつ。☆△□※かよ。もういい。付き合いきれん」  ついに高田たちが折れた。  いじめっ子たちを追い払えたわけではない。  僕にとってはどうでもいい存在の彼らが目の前からいなくなっただけだ。  高田たちも僕なんかを相手にしたくなくなったようだ。  これ以降、彼らが僕にちょっかいを出してくることはなくなった。  つまり。いじめ問題を解決する答えなんてなかったわけだ。  どうでもいい相手や話に気を取られ、気を遣いすぎていた。僕から一方的に、だ。  それだけのことだった。
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