Prologue

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賢木がそのメールに気づいたのは千香と別れ、自宅のある港区の高層マンションに戻った直後のことだった。 「John doe? 誰だ、これは?」 聞き覚えのないアドレスを見て考えたのは、同業者からの営業妨害だ。 本文には画像のリンクが添付され、『I know your secret.』(お前の秘密を知っている)という陳腐な脅し文句が綴られていた。 賢木はそれを鼻で笑うと、即座にメールボックスのゴミ箱に捨てようとした。 どうせどこの負け犬がやっかみ半分で脅そうとしているのだろう。 例えば過去の恋人達への暴力の証言を掴んでいるとか。 くだらない。 だが、一応訴訟の証拠にはなるかもしれん。見てみるのも一興か。 そう思い直して画像のリンクを開いた。 どんなトンデモなネタが出てくるか― 「なっ、なんだこれは…っ!!」 画像のリンク先を開いた賢木は驚愕した。 そこにはほんの数か月前、『仕事』で取引をした人間と自分の姿が写っていた。 「ば、ばかな…」 賢木は蒼白になり、思わず携帯を取り落としそうになった。 携帯のランプが光り、新しいメールが届いたことを知った。 恐る恐る、賢木はメールを開いた。 差出人は同じ人物からだった。件名はなく、本文にはこう書かれていた。 『I know everything about you. I anytime see you, Anytime.』 (お前の事は全て知っている。いつもお前を見ている。どんなときも)
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