月からの使者

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それから間もなく、僕は輝夜と二人でモネの墓参りに行った。 墓地は海が見える小高い丘の上にあった。 早春のそよ風が心地よく、青空に浮かぶ雲と戯れていた。 「お母さん。僕はお父さんとお母さんの息子であることを誇りに思います。きっと頑張って月からの使者として僕の役目を果たします。僕が立派に使命を果たすことができたら、お母さん、きっと僕を迎えに来て下さい。」 輝夜の祈る言葉を聞く僕の背後から、モネの細い腕が僕の体を抱いていた。 僕は声にならない声でモネに語りかけた。 『モネ。今、僕は心から君を愛してる。僕はやっと気がついた。君を支えているつもりになっていた僕は君に支えられていた。君に愛されているつもりになっていた僕は、君を愛していたんだ。君は『整形手術をしたい』という口実で僕を迎えに来てくれた。命がけで僕に最高の愛の結晶を残してくれた。死が 神様のお迎えであるなら、命の誕生は血の通った人間のお迎えだ。愛し合った二人が、この世に新しい命をお迎えする。たくさんの愛に応援され迎えられた命は、きっとまた愛を生み出し、愛を応援するだろう。』 「新しい命を迎える幸せな瞬間のための音楽があってもいいな」 唐突な僕のつぶやきに、輝夜は笑って答えた。 「お父さん。僕と、どっちが早く恋人ができるか競争しよう!」   完
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