ーーーはだぁれ?

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そうね。 あれは、私がまだ小さかった頃。 ずっと手放さなかった物があるの。 なんだと思う? おもちゃは違うわ。 お人形でもないわね。 ふふふ、とてもありふれた物よ? 逆に質問しようかしら。 あなた達なら何を手放さない?  お母さん。 素晴らしいわ。 お父さんは? あまり構ってくれないから違うって。 お父さんはあなた達のためにお仕事しているのよ? 話が違っているって? もとに戻しましょうか。 大切なものでもいいわ。 猫ちゃん? 生命ある物を大切にすることはとても素晴らしいわ。 兄弟。 そうね。あなた達はお兄さん、お姉さんなのだから守ってね。 え?私? 嫌だわこの子ったら。 そんなことをいうものではないわ。 言っても何もあげれないわよ。 いい加減、答えを聞きたい? 仕方ないわね。 私と一緒に生まれて一緒に生きていくはずだった私の兄妹のへその緒よ。 生まれて来てすぐに亡くなったの。 私はその片割れのへその緒を見つけたとき嬉しかった。 居るはずだった半身がそこにいる気がしたの。 あらあら。 そんな悲しい顔をしないで。 そうね、あなた達なら大人になればわかるかもしれないわね。 いえ、わからなくていいかもしれないわね。 どうやって見つけたの? 母がこっそり持っていたの。 見てすぐに私はへその緒を欲したわ。 母には何度も駄目よと言われたのだけど、 私の半身であり、兄妹であり、友達のようなそんなへその緒をどうしても…欲しかった。 そうね。 不思議よね。 だけど、一度はないかしら? どうしても欲しいものが。 おもちゃにしてもそう。 お人形でも。 クレヨン。 色紙。 アニメのグッズ。 テレビのリモコン。 カブトムシ。 挙げたらきりがないわね。 私はへその緒だっただけ。 流石にそのまま持ち歩くことが出来ないから。 母が首から下げる巾着を作ってくれた。 なんだかんだいっても最後は持たせてくれたわ。 結局、あなたの傍にいるほうがいいと苦笑いをされながら。 何故、兄妹が友達? それはね。 へその緒を身に着けていると自然と隣にいるような感じになっていたから。 当たり前のようにそこにいて。 当たり前のように二人で遊んでる。 だから、兄妹であり、友達であるたと私は考えたのよね。 他の人からみたら変な子供だったかしら。 ふふふ。 これはこの場にいるあなた達との内緒。 良い?決して話しては駄目よ? お母さんも駄目だよ。 家族も駄目ね。 友達も…駄目よ。 絶対に言ってはいけません。 これは秘密の内緒話。 話をしたらもうあなた達に会えないわ。 だって、私は ーーー達のーーーだから。
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