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三本の薔薇の花を前に、彼女はうっとりと目を細めて感嘆を漏らす。夢心地の表情。
案の定、記憶は無いようだ。
それもそのはず、ここは彼女の記憶領域。抜け落ちた彼女の記憶は、この世界で様々なお菓子へと変貌する。
あなたが全てを忘れてしまっても。
私はその記憶を大切に保管いたしましょう。
怒りは、弾けるポッピンシャワーに。
安心は、ほんのり甘いやさしい口当たりの和菓子へ。
喜びは、ホイップクリームたっぷりの洋菓子に。
好奇心は、興味を惹く諸外国の菓子に。
涙は、甘いキャンディに。
架空の存在である私が愛を伝え、この世界がどうなるのか。誰も知る由はない。
素直にお茶会を楽しんだ彼女の手を取り、その言葉を口にした。
─────世界が変わる音がする。
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