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少女は目を丸くしたまま、ある疑問を口にする。
「貴方は帽子屋?それとも執事?」
「あなたのお望み次第ですよ。」
「望み……」
「あなたの思うがままの私、そうあり続けることが可能なのです。」
「貴方は、」
「私は、あなたの『if』。あなたの中だけに存在する、もしもの世界。そして────」
一呼吸置いて、男は告げる。
愛おしそうに、慈しむように。
「アリス。この名は、あなたがそうありたいと願った姿。そうでしょう?私だけの、永遠のアリス。」
夜明け色のテーブルの上空。糸でも張られているようにピンと浮かぶかき氷の氷柱が溶け、シロップがぽたりぽたりと滴り落ち、ティーカップの中に小さな波紋を描く。
男はゆったりと話を続ける。
「あなたが現れる度、私はあなたに心惹かれるのです。···イマジナリーフレンドが、元となる人間を思慕するのも何ら不思議ではないでしょう?私とあなた、ふたりだけのこの世界は、普通も常識も存在しないのですから。」
瞼が重い。男の声は心地よく、眠りを誘う。
やがて甘い香りが漂い続ける世界で、少女は眠りに落ちた。
「······想いを伝えど、同じことなのですね。」
甘ったるいバニラの香りが漂う中、そよ風に想いを乗せる。
「アリス、申し訳ありません。また、あなたにお越し頂くことになりそうです。」
捻った蛇口からりんご飴の雫が落ちる。
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