名前を呼んで

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「ねー!名前呼んでよ!」 「宮下」 「 ちーがーうー!下の名前だよ!!」 「ここは学校だぞ!もう授業始まるから教室行け」 シッシッと猫を払うかの様に手で準備室から追いやられる。 目の前でピシャン!とドアまで閉められた。 鍵の音までは聞こえず、辛うじて傷付かずに済んだ。 「前は下の名前で呼んでくれたのにぃ〜!!」 悔しく思いながら、仕方ないので自分の1-Cの教室に戻る。 「あ、(シノブ)!また数学準備室行ってたのかよ!カバンだけ置いてるからノート勝手に借りたぞー!」 「また課題やってないのかよ!あ、数学は俺もやってないからな」 「は?!何で数学やってないんだよ!鬼の塚本だぞ?!やってない奴は居残り確定なんだぞ?!」 「知ってるよ、俺、居残り希望だから」 「は?!何だよそれー!英語は後回しだ! 誰かー!数学の課題見せてくれー!!」 「またかよ、ちゃんと課題やって来いよー!」 周りから総ツッコミされながら、天宮(アマミヤ)は数学のノートを借りていた。 賑やかだが憎めないヤツなのだ。 『鬼の塚本』皆からそう呼ばれているが、課題さえやっていれば、まだ24歳の何て事ない気の良いお兄さん的存在だ。 そう、優しくて強くて、俺の憧れのお兄さんだったんだ。 チャイムが鳴り、皆がそれぞれ自分の席に座り、先生を待つ。 一限目は国語からだ。間もなく先生がやって来た。 天宮は国語の教科書で隠しながら数学の課題を写していた。 俺は、それをボンヤリ眺めていた。
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