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塚本 賢人。「ケン兄」って呼んでたなぁ……。
近所に住んでいて年の離れた兄と同級生で、よく家に出入りしていた。
年が離れていたせいで、扱いはペットの様だったが、頭を撫でてくれたり、とても可愛がってくれたのを覚えてる。
ケン兄の大きな手が大好きだった。
兄が大学進学で家を出たのを機にケン兄とは会えなくなってしまった。
ケン兄と会わなくなって、日常がつまらなくなった。
友達は沢山出来たのに、心の底から楽しめない。
そんな退屈な日常を送っていると、母の毎度どうでも良いご近所情報より、ケン兄が高校の教師になったと聞かされた。
学校名を聞くと自転車で通えるが、偏差値が高く、今の俺では到底無理な学校だった。
ケン兄に会いたい!!
あの高校に受かって俺を見たら何て思うかな?
こんなに賢かったのか!大きくなったなって、また頭を撫でてくれるかな?
俺は妄想にニヤニヤしながら必死に勉強して、無事に合格を果たした。
そして──
「おい、課題出さずに授業も上の空とは度胸あるじゃないか」
ボコッ!と丸めた教科書で頭を叩かれた。
「い、今!凄い音がした!」
頭を押さえて訴える。
思い出に浸っていると数学の時間まで来ていた様だ。
「ついに居残りは宮下だけになったぞ。放課後、分かってるな?!」
有無を言わせない威圧的な言葉に俺は頷いた。
ちょっと待って!今日は居残り俺一人?!
入学してからケン兄とはまともに話が出来ていない。
居残り希望なのは少人数でケン兄と接する事が出来るからだ。
ケン兄とゆっくり話がしたいと思っていたけど、こんなに突然二人きりだなんて…!
放課後が待ち遠しい様なまだなってほしくないような……。
そんなソワソワした気持ちで午前の授業を終え、何を話したか分からないが、天宮とお昼を食べ、午後の授業を終えようとしていた。
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