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武史の言葉に、睦が目を瞬かせる。
「本当に?」
「……え?」
「茉里さん、お持ち帰りして。武史さんは傷つかない?」
武史は眉をしかめた。
「ちょっと。もしかしてそれ、私と茉里ちゃんの関係を疑ってるの!?それ、おカマが嘘って言いたいわけ!!」
「あ。違うなら、いんですけど。確認です。」
「何よ。いい男だって思ってたのに、いきなり嫌な奴にならないでよー。ゲイは女の子にムラっと来ないのよ。」
「確認ですって。俺、そーゆーの偏見ないんです。その分、ヘテロと同じ感覚で考えちゃって。ヘテロにだってあるじゃないですか。友達とか恋とか分かんなくなるくらい、好きになっちゃう事。武史さんがイケメンだったから、確認しただけだよ。」
武史が固まってしまう。
「……い、イケメン過ぎて怖い。」
そう言って笑いはするものの、バクバクと跳ねるような心臓の音が、睦にまで聞こえそうで怖かった。
武史は女性に触れられるのも苦手だった。女性嫌いが発展して、今のバイ・セクシャルに至った。それでも、茉里だけは特別だった。お互いの悩み事や些細なことまで話し合い、誰よりも傍にいた。武史自信が何回か、茉里の事を好きになれたら……などと考えた事がある分、上手く取り繕えない。
それから、何を話して、何で笑ったのかよく分からないまま、会計をして3人で店をでる。茉里を抱えながら、タクシーを拾うと睦から呼び止められる。
「これ、俺の携番です。武史さんが良かったら、茉里ちゃんに渡してください。」
そう言ってその後ろのタクシーに乗って、立ち去っていく。
「ま、マジでなんなの!!イケメン怖いわ!」
武史は心の中が見透かされたような気がして、1人後部座席で頭を抱える。
隣で肩にもたれ掛かり、すぴすぴと眠る茉里ちゃんを横目に、小さく唸る。
「……本当。どうしよう。」
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