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本編が終わり、荘厳なクラシックの旋律とともにエンドロールが流れると、ぱらぱらと客が引き始める。
まだすべて終わっていないというのに、息を殺したような微かなざわめきが劇場内に満ちる。
柚姫がそっと隣を窺うと、チトセは動く気配のないまま、ずっとスクリーンを見ていた。
それで柚姫も安心して余韻に浸る。
音楽が途切れ本当の終焉を迎えると、ふわりと明かりが灯った。
最後まで残っていた客たちもゆっくりと引き始める。
眩しさに二、三度瞬きをする柚姫の前に、先に立ち上がったチトセの手が差し伸べられる。
「私たちも行きましょうか?」
自然とその手を取り、柚姫も立ち上がった。
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