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1. プロローグ「お前が……助けたのか?」
真夏の太陽は眩しく、景色が異様なほど歪んでいる。
「あつい~……」
柚姫は、ぱたぱたと手で仰いだ。
「あー、もう、髪がじゃま。ポニテにすれば良かったー」
耳の下での二つ結び。
さらに、薄茶色の後れ毛が頬にはりついて、鬱陶しい。
柚姫の髪は黒くないが、別に染めたわけではない。
天然の茶髪を友人たちは羨ましがるが、服装検査のたびに引っかかるので、柚姫にとっては悩みの種だ。
私立は厳しいって言うけどさ……。
それに加えてミッション・スクールだからだろうか。普通より厳しい気がする。
「あ~……そういえば、聖書のテストあるんだった」
ぶつぶつ言いながら、学校までの近道となる公園に足を踏み入れる。
ふと黒い布を通りすぎた。
「あれかぶったら、少しは涼しくなるかな……」
でも黒か。よけいに暑くなるかも……
はたと立ち止まる。
「……?」
違和感を覚え、後退した。
黒い布に思えたものはマントだった。
目を凝らすとマントからは手足が伸び、黒い衣装に身を包んだ青年であることが分かる。
ドサッ。
柚姫の肩からカバンがすべり落ちた。
青年は白く生気の抜けた顔をしている。
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