42人が本棚に入れています
本棚に追加
今はこんなだけど、と柚姫は思う。
きっとトワとチトセは仲良くなれる、そんな気がする。もう既に、本当は仲がいいのではないかと思っているのだから――
柚姫は自室のベッドへと逃げ込んだが、
「……柚姫、私から逃れられると思うなよ?」
柚姫がベッドに突っ伏したのとほぼ同時に、トワがギシっ……とベッドを軋ませてのぼって来た。
柚姫を仰向けにし、両手を抑えつける。
「え~……と、この体勢は……?」
おずおずと柚姫が尋ねると、
「食事の時間だ」
トワはきらっと牙を光らせた。
「それとも、もっと違うことを想像したか? ん?」
柚姫はふるふると首を振り、大人しくする。
「良い心がけだ」
トワは、首に張り付いた髪を優しくはらい、顔を近づけてくる。
そして、囁いた。
「私を信じろ」
その言葉に、柚姫ははっとなる。
羽のようにふわりと囁かれた言葉が、まるでトワが自分自身に言い聞かせているようにも聞こえたのだ。
そうだ――不安なのは私だけじゃない。
血を吸い過ぎて、死に至らしめてしまうのではないか、そういう不安をトワも抱えているのだ。
柚姫は目を閉じ、全てをトワに委ねる。
「信じてるよ、トワ」
「柚姫……」
トワの吐息が首筋にかかる。
血を吸われるのもキスも……トワから与えられるものは全て甘くて、優しくて、意識が蕩けそうになる。
愛も、不安も……恐れも、全部……この人と一緒に抱えていこうと、柚姫は確かな幸福感の中、心からそう思った――
~fin~
最初のコメントを投稿しよう!