2. ああ。少々血をいただきすぎたようだ。

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「目を覚ましたようだな」  無感動に声の主は言う。 「氷水を持ってきてやったぞ」  事態を飲み込めずに柚姫が黙っていると、その主はベッドに腰かけた。 「どうした? ああ、やはりまだ動けぬか」  そう言って、ベッド脇の棚にコップを置いた青年は、何処からどう見ても公園で瀕死(ひんし)だったあの青年だ。  黒髪をさらっと肩に垂らし、切れ長の眼がこちらを(うかが)っている。 「何か言いたげだな。私も色々と言いたいことがあるが、まずはお前の問いに答えるとしよう」  言われて、柚姫は何から訊いたものかと(しば)し考える。 「あの……」 「何だ?」 「これは、どういうことでしょうか……?」 「何がだ?」  え~っと……。  訊ねてみたものの、柚姫自身、我ながら要領をえない質問だと思う。 「その、なんて言うか……公園からの記憶が曖昧(あいまい)で……」 「ああ。少々血をいただきすぎたようだ。貧血で倒れてしまった故、お前を部屋まで運んでやった」  ふむふむ、と青年の話を聞いていた柚姫の目が点になる。  血? 「しかし、私もとんだお人よしだ。お前のせいで目的が果たせなかったというのに」  目的? 「あの、何の話……?」  顔を引きつらせた柚姫に、青年はさらりと答える。 「私は、トワ・レフィクル・リヴェッド。お前たちの言葉で言うところの、吸血鬼だ」  きゅ、吸血鬼? 「吸血鬼って……血を吸ったりする、あの……?」 「お前の想像しているとおりだ」  あまりにも突飛(とっぴ)なことに、柚姫は事態を飲み込めず呆然となる。  頭の中を黒い蝙蝠(こうもり)が行ったり来たり……と思ったら、(たたず)んでいた青年……トワがいつの間にか姿を消し、柚姫の目の前を本当に黒い蝙蝠(こうもり)が飛んでいる。  視線で辿(たど)ると、蝙蝠(こうもり)はバサバサと黒い翼をはばたかせ、そのまま下降。  柚姫の視界の中で、黒い衣装に身を包んだ青年の姿へと変化した。
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