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「柚姫は、人間であり続ければ、自分が死んだせいで私も死ぬと……そう考えるのか?」
トワは次々と想いを降らせてくる。
「私自身が……柚姫とともに命を終わらせることを望むとは、思わないのか?」
え? 今、何て……?
柚姫の目がゆっくりと見開かれる。トワは構わず続けた。
「柚姫は今、両親のことを思い出していたのだろう?」
悲しみがトワに伝わっていたことに、柚姫は顔を強張らせた。
「もし、柚姫が人間のままで、そして私が病にかかっていなければ、いずれ私は柚姫と同じ悲しみを抱くことになっていた……」
そのとき、目の前のトワと、会ったこともないチトセの父親の姿が重なって見えた。
最愛の妻を亡くし、終わりなき傷心旅行へと馳せたチトセの父――
「私は、柚姫と同じだけ時を生きられれば、それでいいと思っている。だが、柚姫とならともに永遠を生きたいとも……思っている」
トワは囁くように、けれどはっきりと柚姫に告げた。
「柚姫、愛している……」
柚姫の上に覆いかぶさるようにして、きつく抱き締めた。
「だから……柚姫の気持ちも聞かせてほしい」
少しだけ腕の力を緩めて、柚姫がトワの顔を見られるようにする。
柚姫は視線を逸らさず、真っすぐトワを見た。
金色の瞳が、柚姫の答えを待ちながらも僅かに怯えの光を宿して揺れている。その怯えを取り払うように、柚姫はあふれる想いを口にした。
「私も、トワのことが好きだよ。トワが私のことを思ってくれてるのと同じくらいに、トワが好き。だから――」
視線に力を込めて言う。
「仲間になりたいって言った気持ちはうそじゃないし、同情でもないよ……っ」
「柚姫……」
トワはぎゅっと柚姫を抱き締めた。
「でも……」
トワの胸の中で、柚姫は少し躊躇うように身をよじった。
吸血鬼になってもいいと、そう思った心にうそいつわりはないが、それでも、今まで人間として生きてきた柚姫が、血を糧として生きる魔物へと変わることに、何の抵抗もないと言えばうそになる。
「分かっている……」
「え?」
トワは、柚姫の不安を抱き締めるように言う。
「柚姫の愛も、不安も、恐れも……全部。だから、一緒に最良の選択をしよう」
「選択……?」
小さく訊き返す柚姫に、トワは優しく微笑む。
「そうだ。柚姫が吸血鬼になるか、私が人間になるか……これは二人で決めなければならない、選択だ」
まだ時間はある、焦らず考えればいい、とトワはつけ加えた。
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