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トワは、待ってくれると言っているのだ。そして、柚姫がどちらを選んでも構わないと。
それは、何て深い愛なのだろう。
トワの愛情の深さに柚姫が瞳を潤ませると、トワは何を思ったのか、急に身体を起こして柚姫から離れた。
「トワ……?」
突然放り出され、どうしたのかと柚姫も起き上がる。ふしぎそうに首を捻ると、伸びてきた手に、半ば強引に正面を向かされた。
「ちょっと、何す……」
「大切なことを忘れていた」
「は? 大切なこと?」
「思えば、あいつに邪魔されて、まだだった」
「まだ?」
一体何のことを言っているのか。
「思い出さないか?」
きょとんとする柚姫の顎を、今度は慣れた手つきでぐいっと上向かせる。
あ、と声をあげたのも束の間、トワの金色の瞳が間近に迫り、柚姫はやっと状況を理解した。
「まだ思い出さないか?」
「え? もう、思い出――」
柚姫の言葉はトワの唇に遮られた。
「ん……」
吐息が重なり、一つになる。柚姫はそっと目を閉じた。
トワをもっと感じたい……
そう思って、トワの背中に腕をまわすと、優しく抱き締めてくれた――
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