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混み合っているほどでも無いが、そこそこ今でも人気があるのか人は多いように感じた。
「陽菜はすぐに迷子になるだろう?」
「そうだったね。」
昔二人で遊びに行くと迷子になる事が多かった陽菜の手を何時からか繋いで歩くようになった。
その時と同じように彼は、手を繋いで歩くそれも自然にそうするのだから少し照れくさくなる。
近代画家の個展が催しであったのとここの美術館の一番の目玉は庭に絶妙なバランスで配置されている彫刻だった。
その彫刻を一望しながら食事ができるレストランがあるのだが予約なしでは中々混んでいてすぐには入れそうにはない。
「マー君。外で食べる?」
美術館を出て少し街に行けば簡単に食べる事ができる食堂はあるとここに来る道中で確認していた陽菜がそう言うとクスっと彼は笑っ
て、「陽菜はちゃんとチェックしてたんだね。」と言った。
「ちゃんとはしてないよ。」
「大丈夫だよ。予約してあるから。」
彼は、そう言うと予約している事を入り口で告げ店員が「こちらです。」と二人を窓際の席に案内してくれた。
普段着でも入れる店で良かったと思いながら軽く食事をしてお茶を頂く事にした。
「陽菜。付き合ってくれてありがとう。」
「私こそ、ここに来たかったけど中々来る事が出来なかったから。」
彼氏でも出来ていたら来ていたかもしれないけど運転をしない陽菜に取ってこの美術館は、交通の利便が良くなかった。
「陽菜、今は彼氏はいるの?」
「いたらここに来ないよ。」
「そうだね。」
「マー君は?」
「いないよ・・仕事が忙しいからね。陽菜もしあの時俺が本気で別れるつもりが無かったって言ったら信じる?」
「えっ?」
「卒業式の日・・俺は、陽菜と本気で別れる気は無かったんだ。俺は大学が離れる事で不安で陽菜の気持ちが知りたくてあんな事を言ったんだよ。陽菜は、あの頃俺を見ているようで見てないように感じてたから。」
それは中らずと雖も遠からず。
確かに陽菜は好きだったけど大人の愛では無かったと今では思う。
「でも別れようって言ったじゃない。」
「うん。あっさりウンって言われて呆然としている間に陽菜が居なくなっていて・・。」
「私もショックだったよ・・でも冗談であんな事をマー君は言わないと思ったから。元々私とは釣り合わない出来過ぎた彼だったから。」
「お互い、子供ですれ違いだったんだな。」
そう言われたらそうかもしれない・・でも過去には戻れない。
「陽菜、今度は俺と恋をしょうよ。」
真剣な眼差しで彼が言う・・冗談で言う人ではない事は知っている。
「ごめん。マー君わかんないごめんね。」
心のどこかでこの申し出を受けるべきだと囁く自分もいるけどなんとなくで付き合う事はしたくなかった。
「嫌いになった?試すような事したから?」
「違うよ・・あまりに急でついていけないだけかもしれない。」
「だったら今出会った二人として始めよう・・それでも陽菜がダメだったら諦める。」
真っ直ぐに目をみて言う彼に「うん」と言ってしまった。
出会ったばかりの男女として友達以上恋人未満から始めようという彼の申し出を受けてその日は、彼の車で自宅まで送ってもらう事になった。
「また連絡する。」
「うん。」
この出来事を会社で里香さんあたりに報告すれば小説みたいだと興奮するような話だと思いながら陽菜は眠る事にした。
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