恋愛指南はお手軟かに

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 陽菜は、頭を悩ませていた。 今日は、里香さんから飲み会に誘われていると聖知に言って彼の誘いを断ったは良いが仕方ないと言いながらも「どの辺?」と聞かれて「多分、駅前の居酒屋だと思う。」とだけ言った。 「気を付けていっておいで。」とは言ってくれたけれど付き合っているわけでも無いのに罪悪感を感じて居心地が悪い。 妻帯者が多いのとフリーの男性社員がいない飯塚商事は、飲み会と言えば里香さんと陽菜に武志というメンバーは固定になる事が多い。 「「「かんぱーい」」」 とりあえず乾杯してビールを三人で飲むのはいつもの事で変わらない光景だ。里香は、少し前に彼氏と別れたばかりで今は恋愛はもういいと言い出して恋愛小説の沼ハマりしている。 「そんなに恋愛小説って面白いのか?」 武志がそう言うのも解るが里香が好きな作家は恋愛小説以外にも色々と書くマルチな小説家でもあった。 「恋愛小説もだけど彼なのか彼女なのか解らない作家でね推理小説もあるのよ。頭のいい人なんだと思うわ経歴も何も公表していない作家さんで「ファントム・K」って言うのよ。」 武志も営業をしている関係からかその作家の名前は知っているようであーあと頷きながら。 「俺その作家の推理作品は読んだかもしれない。」 出張の時に時間を潰す為に買った本が「時計の針」という推理サスペンスで一人の男性が友人の死の謎を追いかけていく良くあるストーリーなのにその展開が犯人が意外すぎたと武志も話し出した。 「あの作品は・・あー犯人は言わないで今度読むんだから。」 里香と武志は、意外にファントム・Kの作品の話で盛り上がる。 陽菜は、恋愛ものでも活字は嫌いだからコミカライズされた作品しか読まないと言うと「「陽菜だね~。」」と二人に言われるが嫌味は全くない。 「でも今度のドラマってその推理の作品の方ですよね。」 「そうなのよ!恋愛の脚本に作家が許可だしてくれなくて推理作品の方になったんだって。」 「そんな事があったのか。でも推理作品の方が俺は楽しみだな。」 一年に数冊しか出さない作家でも毎回今どき無いくらいに売り上げる作家としてデビュー当時から話題の人なのに本名も経歴も後姿でさえネットにも何処にも出ていないミステリアスさがまた人気に拍車をかけている作家 だった。 デビューしたのは、7年前になるがずっと人気で発売されて初版本を手にいれる為に本屋に並んだ強者は里香だった。 その日の飲み会がずーっとファントム・Kの話で盛り上がった。 「里香さん大丈夫~?」 「かなり飲んだね。」 大好きな作家の事を会話出来たのが楽しかったのか里香はかなり飲んでいて一人で帰すのは危ない感じでもあった。 「陽菜は~元カレと付き合いなさいよ。」 「ハイハイ。帰りますよ。」 「いい?8年も前の約束を覚えていたんだから許してあげたら?」 「でも、一回別れたんならやり直しても同じじゃないか?」 武志がそう言った時に里香が 「やり直して付き合ってダメなら別れたらいいじゃない。恋愛ってそういう繰り返しなのよ。陽菜はいつもタイミングが悪いと言うか イイ感じなのに相手を待たせてダメになるんでしょ?」 「そうですけど・・。」 「今回は元カレで知らない人じゃないんだから付きあってみたらいいのよ!」 里香の勢いのある話し方に「そうかもしれない・・。」と答えた陽菜に武志が・・・。
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