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記者会見は、寸前まで断っていたし女優との偽装恋愛も断る事は決まっていたのに事務所にも黙って彼が独断でうけた記者会見だったと言う。
「ファントムからは、貴女の事は聞いていたのよ。」
同窓会の日まで時間をかけて脚本を自分で仕上げていたのは、恋愛ものの原作を大事に思う彼が許可しなかった事で脚本を自分で書き下ろす条件で推理ものの原作が通ったからだった。
「でも、記者会見に出ないと言っていたのにあれよ!もうビックリよ。」
安西は、いい加減にしてほしいわとボヤキながらソファーに座る。
「武志の案だよ。飲みに行った時に記者会見で告白がいいって。」
「あれは告白じゃないでしょう!宣言って言うの!」
安西は彼との付き合いが長いのかハッキリ言いたい事を言う女性のようだ。
「陽菜さんですよね!この男でいいの?執着愛なんて小説ではいいけど実際どうなんだろうと思うわ。」
「はあ。」
「安西余計な事を言うな!」
彼と安西が言い合うのを複雑な気持ちでみている自分がいる。
この気持ち・・モヤモヤする!
なんか嫌なんだけど?
「うーっ」
「どうした?陽菜どこか具合が悪い?」
彼は心配そうに陽菜の顔を覗き込む。
「モヤモヤするわ!なんだろう?。」
「ハーッ似た者同士なのか・・。」
安西は本当に飽きれた顔をして陽菜と聖知の顔を交互に見て言った。
「陽菜さんは、彼が好きなのよ自分でも解ってると思うけれどね。彼は確かに一途に貴女を思っていたわ。8年間、作家になってからは、私が彼を貴女に合わせないようにしたのよ。」
「それどういう事?」
「ごめんなさい。考えているような理由ではないのよ。彼の執筆に必要なのは貴女への渇望だった時期があったのよ。」
安西は、作家になって人気がでた彼を正体不明の作家ファントム・Kとして演出して女性なのか男性なのかも解らない謎の作家として売り出した。
「渇望?」
「そう・・彼の作品の多くは主人公が恋焦がれている物語が多いわ。それは彼自身の想いがなければ出来上がらない作品なのに今のように頭がお花畑になっていたら悲恋が書けないし何でも手に入って優秀だった彼が挫折を
しらなければ作家としては駄目だったのよ。」
「作家って妄想で書くんじゃないの?」
「そうね、多くの作家はそうだけれど彼は違うのよ。出来ない人の気持ちや努力が報われない気持ちを理解出来ない人だったからね。」
ブスっと拗ねたような顔をしながら聞いている彼が否定しないと言う事はそうなんだろう。
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