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ラウンジで二人で座ったものの何から話せばいいか解らない。
「陽菜。改めて聞くけど元気だったか?」
「うん。」
着ている服は、ジャージなのにヨレヨレではないしホテルに入って来る時にホテルマンが彼に頭を下げたのを見た陽菜は、彼がこのホテルを何度か利用しているのだろうと思った。
ジャージだとよく考えればこのホテルだと断られる事もあるしかし、彼は断られるどころか部屋まで用意できるなんて一体なんの仕事をしているのだろう?と陽菜は思う。
陽菜は、今日会うまでは彼のスーツ姿を想像していただけにそのギャップが大きく彼の今が予想できずにいた。
「瞳大丈夫かな?」
「一悟君をみるかぎり大丈夫だと思うよ。夫婦ってこんな事もあるんじゃないのかな?」
「そんなもんなんだろうね。」
陽菜は、会社での部長や課長の話を思い出す。
どこの家庭も揉めるのは、子供の事だとよく上司達が話していたから自分は、経験した事がないけど耳年増なところが陽菜にはあった。
彼と話し出そうとした時に、ブーブーっと彼のスマホの着信を知らせるバイブの音がした。
「もう見つかったか・・。陽菜俺は、行かないといけないから連絡先教えてくれないか?今度食事にでも行こう。」
「う・・うん。」
断る理由もなくお互いの連絡先を交換した。
「じゃあ!陽菜また近いうちに連絡するよ。」
彼は、そう言ってここの支払いを済ませてホテルの外に出ると険しい顔をしながらスマホで話をしているようだったがスーッと白い高級車が停まると彼は、その車の後部座席に乗り込んだ。
結局何から話せばいいかを考えているうちに彼は、高級車で去ってしまい一人残された陽菜は仕方なく自宅に帰る事にした。
ホテルの外に出て普段は、あまり使わないタクシーで帰る事にしたのは何故か疲れを感じたからで瞳の夫婦喧嘩のその後も気になりながらも松井聖知がいったい現在何をしている人なのかそればかり気になった。
そんな事を考えながら自宅に着いたのは日付が変わる少し前で今日は、土曜日で明日は日曜日だから一日ゆっくり過ごせると思いなが
らベッドに潜り込む。
早朝に瞳からのラインと彼からの連絡があった事に気がついたが、瞳のラインを見て驚くしかなかった。
『松井君がとってくれた部屋なんだけどジュニアスイートだった。』
一泊6万以上もする部屋をポンと8年ぶりにあった同級生にプレゼントするなんて・・
何の仕事をしているのだろう普通の金銭感覚ではあり得ない。
彼からのメッセージを次にひらくと、
「昨日はごめん。また連絡する。」
という短い文章のメッセージのみだった。
昔付き合っていた元カレだからと言って何の仕事をしているのかなんて気軽には聞けないし服装と彼の行動とのギャップだけが陽菜は気になってしかたがなく。
日曜日だと言うのに悶々としながら一日ベッドでゴロゴロして過ごして月曜日には、少しは気になりながらもあれから彼からの連絡も無かったのもあってかすっかり忘れて何時もの日常に戻る事が出来た。
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