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 貴志は美沙が夏休みに入った初日に契約通り荻原邸にやって来た。彼は何回か荻原邸に遊びに来ているから荻原夫婦とは顔見知りだが、美沙とは自分が来ても彼女が会おうとしなかったり出かけていたりしたので会うのは初めてだった。で、琴美に紹介されて自分の部屋に入って来た彼を迎えた時、美沙はその出で立ちや容姿にすっかり魅了されてしまった。  姉貴が自慢する訳だと思いつつ美沙は顔を赤らめて貴志と初対面の挨拶を交わした。  実際、2時間の授業を受けてみて美沙は初日とあってクーラーがギンギンに効いているにも拘らず額に汗が滲む程、緊張したが、三つしか歳が離れていない所以から次第に同世代の親しみやすさを感じ、教え方が優しいし、分かりやすいし、所謂、微に入り細を穿った説明をしてくれる上、何といってもルックスが好いから途中から色めき立って来て授業が終わって彼が部屋を出る時、一日おきに来てもらう契約だったのに明日も来てくださいと思わず言ってしまった。で、笑いながら出て行った貴志を見送ろうと部屋を出てみると、これ見よがしに寄り添って来た琴美と共に玄関を出て行くのを指をくわえて目送するしかない仕儀となり、畜生、姉貴めと偏に悔しがり恨めしがった。  部屋に戻った美沙は、その途端、勃然と野望が湧いて来た。貴志さんを姉貴から奪い取る。その一念に燃え、それには・・・と思案を巡らし始めた。  
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