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「ねえ、どうだった、あの子?」
愛車を運転中に訊かれた貴志は、少しまごついた。正直、琴美にはない豊満さを美沙に感じていた彼は、実の所、魅力を感じ、かまけていたのだ。
「う~ん、何と言うか、素直な子だと思ったよ」
「素直?美沙が?」
「ああ、納得いかないの?」
「私には反抗的だから」
「そうか、仲悪いのか?」
「悪かないわ。頭は悪いけど、ふふ」
随分な言い種だと貴志が思っていると、「だからあなたに申し込ませたの」と琴美は含み笑いを浮かべながら言った。
そんな彼女に貴志は不快感を覚えながら言った。
「何だか楽しそうだな」
「そうよ。ふふふ」
「さっきから何、笑ってるんだ?」
「だって、あなたとドライブしてるんだもん」
「他にも理由がありそうだが・・・」
「ふふ、分かる?」
うんと頷く貴志を見て鋭く穿鑿する気配をありありと感じて、「だって、あの子、今頃、ふふ」
「今頃、どうしたって言うんだい?」
「私を羨ましがってるだろうなあって・・・」
「その様子だと君、ひょっとして嫉妬させる為に申し込ませたのか?」
「そうじゃないって。私はあの子のことを思って・・・」
そう言いながらもレストランに着いてから母が貴志に渡した授業料三千円を当てにして彼といつもよりリッチな外食を楽しんだのだった。
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