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 一真はゆっくりとドアを開けて春斗がいないことを確認すると、忍び足で廊下を歩いた。春斗の寝室のドアノブに手を掛けると、ゆっくりと中に入る。香織は目を閉じながら、首を右側に傾げていた。 「香織」  小さな声で香織に呼びかけると、応答は無い。エアコンの稼働音が五月蠅すぎて、すぐに。今度は近寄って、香織を揺さぶりながら呼んでみる。だらーんとしたまま香織は反応しない。体は冷え切っていて、もう生きていないようだった。死んだように眠る香織に何度も声を掛け続ける。でも目も口も開けない。香織は一真に全体重を預けている。  一真は首に人差し指を当てると、脈を測る。気持ち悪いぐらいにドクドクいうはずの鼓動は一度も感じられなかった。ただ空だけを感じて、一真の血の気がサァっと引く。  死んだように眠っているのではない。
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