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幼馴染の春斗の家は異様に冷え切っていた。
一真が本社から上海に出向を命じられた為、別れを言うために久しぶりに遊びに来たのだ。インターホンを鳴らし、ドアを開けると温かい春斗の笑みとは裏腹に部屋の中は異様に冷え切っていた。いくら夏だからとは言え、冷房が効きすぎではないかと一真は思う。
玄関に踏み入ると、靴を脱ぎながら「寒すぎない?」と思わず口にした。すると春斗は冷房に長らく当たって感覚が狂ってしまったのか「そう?」と何ともなさそうに言う。あまりの寒さに外では脱いでいたジャケットを羽織ろうかと思ったが、羽織ろうとする寸前で春斗が止めた。
「リビングは普通だから、羽織らなくて大丈夫だよ。寒いの玄関だけだから」
そう言って廊下を歩きだすと、一真は「あーそう?」と言って後を追う。
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