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確かにリビングは玄関ほど冷え切っていなかった。窓も開いているし、外からの熱風が冷気と混ざって丁度いい気温になっている。リビングのエアコンを見ると、稼働していない。シャッターが閉め切ったみたいに、冷気が出る口は閉じていた。一真は不思議に思いながらも、他の部屋のエアコンが稼働しているのだろうと考え、特に言わない。
「香織は今日来れないみたいなんだ」
「あー、まぁ仕方ないよ。結婚するんだし、忙しいだろ」
「ちょっとぐらい良いのにね。幼馴染が遠くに行っちゃうっていうのに」
一真の前に缶ビールが置かれると、一真はネクタイを緩めながら「サンキュー」と言う。カシュッとプルタブが外れて炭酸が外に出る音がして、ビールを口につけるとおっさんみたいな声を漏らした。30過ぎだからもうおっさんなのだけれど。それを聞いて、春斗が「おっさんだね」と笑った。「お前もな」と言って、けたけた二人で笑う。
「で、どこに行っちゃうんだっけ?」
「上海」
「上海かぁ……遠いね」
「でも飛行機でそんなかからないよ。ロサンゼルスって言われるよりはマシ」
「ロスに出向命じられた人いたの?」
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