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「うん、俺の隣の奴がロス行きで嘆いてたよ。彼女いるのにどうしようって」
「それは大変だね」
他人事のように一真は頷くと、春斗がビールの蓋を開けた。カシュッと小さく聞こえて、ちびちびと飲み始める。
「じゃあ本当に会えなくなっちゃうんだ。何年向こうにいるんだっけ?」
「三年。だから三年は日本に帰ってこない」
「三年も会えないの、寂しいな」
弱々しい声で春斗が言うと、一真は「泣くなよ?」と茶化す。春斗がムキになって「泣かないわ」と軽口を叩いた。それでまた笑いが起こる。しんみりとした空気が一気に風に流される。
「ああ、香織にも最後に会いたかったなぁ……」
思わず本音を溢すと、春斗が俯く。香織は来月結婚予定だし、式場やらウェディングドレスやら招待状やらで大変なのだろうが、せめて最後ぐらい会いたかった。結婚式が行われる頃には一真はもう上海にいるし、出席できないのだ。
「後で電話でもしてみようかな」
そう言って春斗が出してくれたおつまみを食べると、春斗も「そうだね」と柔らかい笑顔を浮かべて言った。
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