1.私は好美

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1.私は好美

「いってきま~す」  私の名前は野村好美。中学一年生のとても地味な女の子。肩まである髪を1つにまとめている藍色の大きなリボンがトレードマーク。  今日も今から学校に向かうところ。  ドアを開けて外へ出ると、4月の暖かい日差しが迎えてくれた。  いつも通りの登校路を真っ直ぐ歩くと、学校はあっという間に見えてくる。  私が通う市立葉山中学校は、全校生徒777人(ラッキーセブンなので覚えやすい)のそれなりに大きな学校。校舎は5階建てで、一学年8クラス。夜には夜間中学をやっているみたいで、近所の田中さんが通っているって言ってた。特色としては、部活の数がとても多くて100個ぐらいあるらしい。  校門を入ったところで、後ろから女の子が駆け寄って来た。 「グッモーニン! 好美!」 「あ、おはよ〜。アリアちゃん」  彼女の名前は、白石アリア。北欧のどこかの国から引っ越して来たらしい。 お母さん譲りの腰まであるブロンズの髪と青い瞳がとても綺麗な女の子。でも、お父さんは日本人なので日本語もそれなりに話せる。手先が器用な私の親友。 「そーいえば、今日は理科の特別授業があるんだったよね」 「そういえばそうだね。昨日、先生が言ってたね」  話しながら校舎に入って靴を脱ぐ。 「どんなことをやるんだろう? 楽しいといいな〜」  アリアは、ワクワクと目を輝かせている。 「ね〜。楽しみ」  私も同意する。  そんなことを話していると、 「ありゃ、とうとう階段だよ…」  アリアが嘆いた。  私達のクラス、1年D組はこの階段を上った先の3階にある。 「も〜。仕方ないでしょ。ほら、上ろう」  私は先に階段を上る。 「うぅぅ、好美と一緒にしないでよ。私は運動苦手なの」  アリアは、私を心底うらめしそうに見てきた。  実は私、周りのほとんどの人には隠しているけど新体操が得意。だから運動神経はそれなりにある。(自分で言います) 「それに頭も良いしね…」  アリアから殺気を感じる。  でも、私は否定も肯定もせず何も気づいていない振りをして階段をスタスタと上った。アリアも大きなため息をついてのろのろとついてくる。  確かに私は頭も良い。本をよく読むからだと思う。自慢になるからこの事もあまり周りには言っていないけど。(また自分で言います) 「でもアリアちゃんは手先が器用だし、美術とかパソコンもすごい得意じゃん」 「それは、まあね〜」  アリアは途端に機嫌を直した。  こういう素直なところもアリアの良いところ。  そんなことを話していれば、3階にはすぐに着いた。  にぎやかな廊下を進んだ先に1年D組はある。  教室に入って席に座ると、鞄を置いたアリアが前の席から振り返ってきた。 「ね、ね、私ね、最近浴衣を作ってみたいんだ。今日の放課後、材料を買いに行くの付き合ってくれない? あと、型紙を作るのも! 好美の分もお揃いを作るから!」 「ゆ、浴衣!? 付き合うけど、それって作れるの!?」  私はアリアの言葉に驚愕する。 「うん! きっと作れる!」  自信満々なアリアに私は心からの拍手を送ったのでした。
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