皇子

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 夜になると、壁の向こうから聞こえてくるのですよ。押し殺したような、子どもの小さな泣き声が――それを毎夜隣の部屋で聞く、私の気持ちが分かりますか。  フッラム様は、皆のいる前で一度たりとも涙を見せたことはありませんでした。その堂々たる貫禄、溢れ出す威光、まさに小さなアクバル大帝でございました。ご自分に与えられた崇高な使命、この大帝国を背負う責任を、幼いながらに重々理解しておられたのです。  それでも夜になると、遠く離れたお母様を思い出してしまうのでしょう。あれほどしっかりしておられても、まだ六つ。ほんの六つの子どもだったのですよ。  今でもあの頃の、まだ少し舌ったらずの幼い声で、それでも帝王のように声を張り、私の名を呼ぶあの御方を懐かしく思い出します。いえ、懐かしいと言えるほど、私はまだあの方から離れていない。今もまだ、耳の奥に生々しく響くのですよ。呼ばれたような気がして、振り返ってみて気づくのです。そこにあのお姿はない。私はあの御方を――私の魂を永遠に失ってしまったのだと。  あの御方を失った瞬間に、私はすでに死んだも同然なのですよ。
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