おこる、おこる。

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 私の声は、完全に無視される。白骨死体が片づけられていくのを見ながら、私はどこか頭の冷静な部分で理解してしまった。  ひょっとしたら。この地に、祟りを成す神様など、いないのかもしれない。ヤマさま、なんて彼らが作り出した幻かもしれない。何故なら誰も祟りの内容を知らない。恐らく、祟りが起きたこともないのに、長年の伝承を信じて“起きるかもしれない”祟りを異常に恐れているのがこの村なのではないか。  だから、そのためにちょっと銅像が劣化するたび“怒りを買った”と思い込んで生贄を捧げている。  その証拠が残らないようにするために、資料などは一切残さないで村ぐるみで犯行を行い、口をつぐんできたのだとしたら。 ――は、はは……特大スクープじゃないの。こんな、こんなバカげた話が令和の時代にあるなんて。  ああ、カメラもなく、生きて帰れないのなら、そんなスクープにも意味はないのだけれど。  信じたくない現実が、目の前に迫っている。服の腹部分と下着を引き裂かれた私は、村長の手で念入りに腹部に油性ペンでの印をつけられた。丁度、小腸が詰まっている臍の下あたり。まさか生きたまま、意識もあるまま腸を引きずり出そうというのか。 ――冗談、きつすぎる、こんなの……!  人間、恐怖が臨界突破すると笑うと聞いたことがある。自分の顔が笑みの形に引き攣っていることを自覚して、私はようやくそれが真実であると理解した。涙で視界が滲む。暴れても、体はほとんど動かせない。村長の手にメスのようなものが握られている。それがゆっくり、私の下腹部に近づけられる。腸を引き抜いて、そのまま死ぬまであの銅像に閉じ込めて放置するというのか。 ――あ、はは。そこまで悪い事した?私。  刃先が、皮膚に食い込む。激痛。 ――死にたく、ない、いや。 「い、いやああああああああああああああああああああああああ!」  勢いよく引き裂かれた腹から。赤い飛沫と中身が、どろりと零れ落ちていった。
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