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あの事故から半年が経った頃、私たち一家は引っ越す事になった。
父と母の話の中で突然決まった事で、まだ子供の私はなぜ引っ越す事になったのかは聞かされていない。
ただ、引っ越すーーそう言われただけ。
幼い頃からずっと一緒にいて、一緒に遊んでいた隣の家に住む鈴森千恵子の家に行き引っ越す事を告げた。
「千恵子、ごめん。私たち引っ越しするみたい」
寂しさが心を埋め尽くしている。
今にも泣き出しそうな情けない顔をしているだろう。それでも泣きたくなかった。泣いたらこれまでの楽しかった時間が、滲んで消えてしまいそうだったから。
「ーーいつ?」
千恵子は寂しそうに私を見上げて聞く。
「今週の土曜日ーー」
ーーはぁぁ。
いつもより深いため息が溢れる。
手を握り合い、千恵子に聞いた。
「ねぇ、千恵子ーー私たち、親友だよね?これからもずっと...」
その言葉に千恵子は微笑み返した。
「うん」
窓から入り込む夕陽で、千恵子の頬は仄かにオレンジ色に照らされていた。
ーーこの約束を信じよう。
私はそう思っていた。
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