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出先から直帰した俺、秋月 拓馬は、一人暮らしのマンションのドアを解錠して無造作に開けた。
その途端目に入った、自分のじゃない靴に自然に頬が緩む。
ナオ、来てるんだ。前もって連絡くらいしろよなぁ、まったく。
内心の苦言とは裏腹の顔で、俺は短い廊下を進んで行く。
突き当りのLDKのドアを開けると、本橋 直はリビング部分のソファに身体を投げ出していた。
俺が部屋に入って来たこと、──それ以前にたかが1LDKのマンションで玄関ドアが開いて帰って来たことにも当然気づいてる筈だ。
なのに、恋人は天井を見つめたままこっちに視線さえ寄越さない。
もともとそれほど大きなソファじゃないし、長身のナオが寝転がるには狭過ぎるみたいで、曲げた長い足が窮屈そうだ。
バッグやジャケットはソファの脇に乱雑に投げ出してある。
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