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晴れと男と
吾郎ちゃんは、太陽が好きだ。
吾郎ちゃんは実はキ○ィが好きだ。
私のキ○ィのサンダルを勝手に自分の物にしたり、いつの間にか携帯にご当地キテ○が沢山ついている。でも吾郎ちゃんはキテ○を好きとは決して言わないし、太陽が好きとは死んでも言わない。晴れの日は大概部屋の中にいる。どうしてかというと吾郎ちゃんの背中には絵が書いてあって、夏でも長いシャツを着なくちゃいけないからだ。おっさんは、暑いのが嫌いだ。だから晴れの日は大概部屋にいるけど、窓をじっと見ている。なんだかお母さんに叱られて遊びにいけない子供みたいに見える。
吾郎ちゃんはいっぱい嘘をつく。
吾郎ちゃんは暴力男。
吾郎ちゃんはやくざ煙草を吸ってるおっさんやくざ、あたしはやくざの女、馬鹿な女。
そんなのわかっているから、あたし。
死んでも吾郎ちゃんの事、嫌いって言ってやんないぞ。
【晴れと男と】
「ねえ吾郎ちゃん聞いてよ。元彼の話なんだけどさ、あたしと付き合う前にそれはそれは馬鹿な女を弄んだんだって。色ボケのブチャイク。ある日彼は一発抜く目的で彼女の誘いを受けました」
「…そいつは今聞かなきゃいけない事なのか」
「そ、ハムエッグ食べながら聞く話なのよ」
ぐぐっと、吾郎ちゃんの眉間に深い皺が出来た。実は吾郎ちゃんには内緒なんだけど、お父さんと吾郎ちゃんは同い年だ。あたしはすましてハムエッグを口に放り込んで、ぐちゃぐちゃに噛んだ食べ物をわざと口を開けて見せると、やめろ、行儀が悪いとお父さんそっくりの叱り方をした。
でもそうでもしないと吾郎ちゃんは喋らない。奴はすけべ話以外は、無口なのだ。体はあんなに(ムフフ)なのにさ。
むっつりすけべだ。
あたしは馬鹿な女のふりをして、話を続けた。
「その日は、今日みたいにこんな暑い夏でした。自宅に元彼をまんまと誘った馬鹿女は、暑い暑いといいはじめて、服を一枚脱ぎました。着ていた服は可愛いセーラー服。さて最初に脱いだのはどこだと思う?」
「さあな」
「パンツよ」
「ぶっ」
吾郎ちゃんがハムエッグを吐き出した。しかめっ面しながら、肩を震わせる。吾郎ちゃんは人前で笑うのが苦手だ。だからあたしはしてやったりとにんまり笑った。
「信じられる?パンツって最初に脱ぐもの?まあ…萎えずにやった男も男だけど、どうですか吾郎ちゃん、あなたそんな女の方が好み?」
「…台拭き貸してくれ」
吾郎ちゃんの困った顔、(これは貴重だ)
吾郎ちゃんのしかめ面、(これはいつも!)
吾郎ちゃんの事は、私が一番分かってる。それは吾郎ちゃんよりも、さ。
吾郎ちゃんは、
太陽が好きだ。
吾郎ちゃんは実はキ○ィが好きだ。
私のキ○ィのサンダルを勝手に自分の物にしたり、いつの間にか携帯にご当地キテ○が沢山ついている。でも吾郎ちゃんはキテ○を好きとは決して言わないし、太陽が好きとは死んでも言わない。晴れの日は大概部屋の中にいる。どうしてかというと吾郎ちゃんの背中には絵が書いてあって、夏でも長いシャツを着なくちゃいけないからだ。おっさんは、暑いのが嫌いだ。だから晴れの日は大概部屋にいるけど、窓をじっと見ている。なんだかお母さんに叱られて遊びにいけない子供みたいに見える。
吾郎ちゃんはいっぱい嘘をつく。
吾郎ちゃんは暴力男 。
吾郎ちゃんはやくざ煙草を吸ってるおっさんやくざ、あたしはやくざの女、馬鹿な女。
そんなのわかっているけど、でも吾郎ちゃんは自分の事がわからない
そんな男を好きって、すごく愛しがいがあるって思わない?
あたしが好きな癖に吾郎ちゃんは冷たくする。
吾郎ちゃんは、天の邪鬼。
本当に好きなものは、手に入れたくないんでしょ。
だからあたし、死んでも吾郎ちゃんの事、嫌いって言ってやんないぞ。
ねえ、吾郎ちゃん。あたしがあなたを捨てたら、あなた終わりだよ。
とか思ってたら、吾郎ちゃんはにやにやしてる私に台拭きを投げつけて、暑いな、と言った。
いやらしい目つきはパンツを脱げ、と言ってるみたいだった。
【晴れと男と】完
男ってバカね
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