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第一話 01
はあ、はあ…
一人の男が、息を切らせながら、山を登っていた。
(ほんとにこんなところに来て、願いが叶うのか…?)
男の名は前田。
この山に来たきっかけは、昨日の夜のことだった。
前田が何気なくインターネットを閲覧していると、突如として画面が真っ黒になった。故障か、と舌打ちしていると、画面が急に切り替わり、『あなたの願いを叶えませんか?』などという文言が表示されたのだ。
どうせ意味不明なスピリチュアルを利用した詐欺だろうと思いながらも、少し興味が沸いた前田が『次に』を押すと、何か情報を入力させるというものではなく、『魅碌山に来れば、あなたは幸せになるでしょう』と謎めいた文章が表示され、山の位置情報を示した地図が添付されているだけだったのだ。
新手の詐欺か、とも思ったが、前田は無職でどうせ仕事もなく暇を持て余しているだけなので、行くだけで願いが叶うなら儲けものだと思った訳だ。それに詐欺だとしても、無職の前田が出せるお金など、少しも存在しない故、というのもあったのだった。
インターネットで検索しても、魅碌山などという山は一つもヒットしなかった。そもそも、存在してない山なのではないか、と勘繰ったが、添付されていた地図に従うと、人里離れた場所に、本当に山は存在していたのだった。
道がかなり荒れているところを見ると、誰かが山を管理している可能性は低いだろう。
(人々に忘れられた山、ってか…それにしても、いつまで歩きゃいいんだよ)
かれこれ一時間程前田は歩いているが、荒れた山をあてもなく進んでいるだけで、まるで何も起こらない。これはやはり、何かの悪ふざけだったのかもしれない。それに、もうすぐ日が落ちて、山から出られなくなってしまいそうだ。
(どうせこんなことだと思ったよ。あーあ、つまんね…もう帰るか…)
前田は無性に腹が立って、足元にあった小石を思い切り蹴った。
その時だった。
『お前の望みを、叶えてやろう』
どこからか、そんな声が聞こえたのは。
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