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終章
「明日は七夕だね、佳苗ちゃん」
最後の依頼客が立ち去った夜の相談所で、夢奈はそう呟いた。
「佳苗ちゃんは、何を願うの?」
「うーん…やっぱり、彼氏が欲しいっ!」
きっぱりと言い切る私に、夢奈はおかしそうに笑った。
「懲りないねえ、佳苗ちゃんは。あはは」
「…だってぇ…あんなことがあっても、欲しいものは欲しいんだもん」
私がすねたような素振りを見せると、
「貪欲だねえ、あはは」
と笑われてしまった。
「まあ、でもさ、願いなんて、そんなもので良いと思うよ、私は。願いはさ、叶うか分からないからこそ願いであってさ、必ず叶う願いなんて、やっぱり変だよ」
「そうだね」
「欲張らずに、ささやかに祈る。それだけで十分なんだよ」
私は自然と、相談所の窓から見える星を眺めていた。
「ねえ、夢ちゃんは、願い、何にするの?」
「私は、ペロちゃんを100個かな」
夢奈は、にやりと口角を上げた。
[完]
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