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「ねえ夢ちゃん。この相談所もさ、そろそろ有料にしない?」
私はさり気なく、夢奈にそう訊ねた。
「なんで?」
「いや、夢ちゃんがあんなに凄い推理してるのに、無料だと、ちょっと勿体ないんじゃないかなーって」
「そんなこと言って、佳苗ちゃん。お金欲しいだけでしょ?何にお金使いたいのか知らないけど」
私は狼狽する。
まさに図星だ。夢奈は本当に恐ろしい。ペロちゃんを美味しそうに舐めながら、平然とした顔でこちらの意図をすぐに見抜かれてしまう。
やはり、迂闊なことはできないか。
「それにさ、無料だから皆来るんだよ。ここでやってることなんて、ほぼ趣味みたいなもんじゃん。アドバイスもさ、人の体験を聞いてあげるだけで手ぶらで帰ってもらうのは可哀想だから、してあげてるだけだし。やっぱり、欲を出したら駄目なんだって。一気に人が来なくなるよ」
諭すように夢奈に言われてしまうと、私は反論ができない。
「そ、そうだね」
「それにしても最近、フワフワしてるね。ひょっとして、何か良いことあったの?」
矢継ぎ早に、こちらの状況を言い当てられてしまう。
「いや?」
「ならいいけど。あんまりフワフワしてると、小説が下手になっちゃうぞ~」
おどけて、夢奈は言った。
(この子、ほんとは全部知ってて、私を弄んでいるんじゃないか…)
そう思わせるほどに、夢奈の態度には堂々たるものがあった。
私は、まだ正彦のことを夢奈に話せていなかった。
理由は、単純な気恥ずかしさもあれば、結婚することになればいずれ夢奈にも大きく関わる存在なので、きちんとした話す機会を設ける必要性があると感じていたから、というのもある。
しかし、それよりも最も大きな理由は、あるにはあるのだけれど…
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