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「……じゃあ、拓也と遊びに行っても、不機嫌にならないでくださいよ」
「わかった」
その言葉がOKサインだとわかって、英司はぱっと明るい表情になった。
すぐに横に腰掛けると、くいと顎を持ち上げられて、指が唇に触れる。
「口開けといて」
そうかと気づいて、あ、と少し口を開く。英司はそんな千秋を満足そうに眺めた。
なんだ、これ……。これでは英司からの口移しを待ち望んでいるみたいだ。英司は今からコップに口をつけようとしているし。
予想以上に恥ずかしくなって、でも口を閉じるとまた面倒くさいことになりそうで、ぷるぷると赤くなりながら心の中で早くしてくれと唱える。
「ん」
「んぁ……」
やがてコップの水を少し含むと、その唇が触れる。そしてぴたりとくっつけると、水がちゅるりと流れ込んできた。
「ん、ん……」
こぼれないように、こくこくと必死に受け入れている。なにこれ、なにこれ……。英司に餌付けされてるみたいに、それに縋ってしまう。
それと同時に冷えた舌も潜り込んできて、心地よい苦しさが増した。冷たいそれが気持ち良くって、千秋も積極的に絡めた。……さっきもたくさんしたのに。
「んん……っ」
「千秋……」
ようやく唇が離れたところで、英司が耳元に口を寄せて「もっといる?」と聞いてきた。
「好きにすれば……」
きゅっと握った英司の服を離さず、顔をそらして蚊の鳴くような声で答える千秋。それに英司は興奮したような笑みを浮かべると、また千秋の口を開かせる。
結局、千秋の喉の乾きはこれでもかというほど満たされたのだった。
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