5. タイミングってやつ

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 しかし、家に来ていいと了承したのは自分だし、拓也はもう来る気満々だ。 「わかった。じゃあ来週で」  というか、本当はその懸念さえなければ、手放しで歓迎していたのだ。自業自得だ。 「よしよし。千秋んち楽しみだなあ」 「ええ、別に何もないけど……」  拓也の家には漫画とかゲームとか色々あったけど、対する千秋の家にはそういうものがない。 「まあいいんじゃん。じゃあ、また連絡するわ!」 「うん。またな」  手を振って自分の家に向かって帰っていく拓也。  まあ、千秋が英司に毎回説明したおかげで、拓也が生粋の女好きだということは伝わっているはずだ。  今日だって、昨夜「拓也と遊びに行っても不機嫌になるな」という条件で恥ずかしいことに付き合ったにしても、快く送り出したのは、拓也は警戒しなくていいのだとわかってきているからだろう。  そうそう、拓也はただの友達。とりあえず英司に変な疑いをかけられる云々は気にすることないじゃないか。  となれば、気をつけるべきことはただ一つ。  うちのアパートで拓也と英司が鉢合わせないようにすることだ。特に、隣から英司が出入りするところを目撃されてはいけない。  それは何とか調整すればいいだけだし、大したことではないだろう。  英司に説明して合わせてもらうなど、彼の手を煩わせるまでもない。巻き込むのは気がひけるし。  それさえクリアすれば、友達が一人暮らしの家に遊びに来るという楽しいイベントだ。なんだ、案外大丈夫かもしれない。
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