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「キスしたい?」
二人で横になって向かい合いながら、英司が再度聞いてきた。これに答えないと、この先はない、とでも言いたげだ。
「なんで……」
「いいから、言ってみろよ」
言わせたいだけに決まっている。
でも、改めて英司と別れるなんてことにならなくてよかった、とふと思った。それに、彼のおかげで拓也に言う踏ん切りもついたのだ。
柳瀬さんは、俺のこといつも考えてくれてる。そう思うと、またじんわり心が暖かくなって、その人が目の前にいるのだと心臓がとくりと跳ねた。
「……たい」
「なに?」
「だから、したいってば……っ」
そう言ってしまえば、英司は目を丸くさせた。自分で言わせたくせに。
でもすぐに覆い被さってきて、彼の唇が千秋のを貪り始めた。余裕が全くない。それは英司だけではなくて、二人して激しく求めあった。
キスをしていると、苦しいのに英司でいっぱいになるような気がした。
この感覚が好きだ。柳瀬さんのくれる熱が心地いい。柳瀬さんの話す声が好きだ。柳瀬さんの整った顔も好きだ。
──俺、柳瀬さんが本当に好きだ。
心の中ではあるが、驚くほどさらっと出てきたその言葉。付き合っている以上、当然その気持ちがあったわけだが、今までは素直に思うこともできなかった。
だから、一旦それを言葉にすると、改めて千秋は自覚することになり、ばくばくと心臓がうるさいほどになり始める。
「千秋、すっごいドキドキしてる」
くっついている英司にも伝わってしまったらしく、千秋はキスでぼーっとする頭で、しまったと思った。
「いいから……」
「はいはい」
またキスが続いて、今度はそれだけではなく、英司の手が千秋の体を撫で始めた。
「んぅ……っ」
英司は興奮していて、すっかり男の顔になっている。
千秋はどきりとした。
それに、自分も興奮している。今日は、たくさん英司を感じることができるのだとわかって、思わず千秋は切ない息を漏らした。
「千秋、好きだ」
英司はその夜、たくさんキスをして、たくさん好きと言って千秋を甘やかした。
キスをされるたび、その言葉を囁かれるたび、千秋は満たされて満杯になるのだ。
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