6. そばにいる方法

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 火曜日、千秋はいつも通り拓也と大学で昼食をとっていた。 「そういや弁当になった理由、ちゃんと聞けてなかったけど……もしかして」  名探偵さながらの考えるポーズをとりながら、拓也は千秋の弁当を凝視した。 「う、今頃つっこむのか、それ」 「だって目に付いたんだもん」 「で?それ先輩と関係あんの?」  ニヤニヤと下世話な感じに聞いてくる。  拓也に英司と付き合っていることを打ち明けて以来、こうした話をしたがる。  いや、今まで千秋にその手の話題がなさすぎてできなかっただけか。しかし、恋人がいるとわかれば拓也は興味津々だった。 「……柳瀬さんの分つくるから、俺も弁当に変えただけ」  聞かれて恥ずかしい思いはあれど、なぜか気が楽になるのが不思議だ。きっと、拓也が普通に受けとめているからだろう。 「ていうか、千秋の飯毎日食えるって普通に羨ましいな」  たしかに、弁当をつくる宣言をしたとき英司も「俺は千秋の飯食えて、いいことだらけだけど」みたいなことを言っていた。   「ならお前にもつくってやろうか?」 「いや……あの先輩怒りそうだし。たまにでよろしく」 「たまにはつくれってことかよ」  だって美味いんだもん、と子どもみたいに口を尖らせた。その顔が面白くて、ぷ、と思わず吹き出す。 「あー、もう十一月になるのか」  食堂にあるメニュー用のカレンダーを見て、拓也が呟いた。 「どうしたんだよ急に」 「いや、冬休み終わって、春休み終わって、そしたら三年だろ?実習も始まるし、いよいよだなって」 「ああ、たしかに。もうそんなんか」 「さすがに将来のことは真剣にやらねえと」  そうだな、と同意する。  千秋は中学教師志望であり、三年から実習がある。ちなみに拓也も同じだ。  ふと、英司を思い出した。医学科は六年制、彼が医者を目指して日々勉強しているのは周知の事実だ。  湊は看護学校に行っていると言ってた。頑張ってるのが知り合って少しでもわかる。三年なら、卒業も近いのかもしれない。  色々な道がある。  千秋には教師になるという明確な志望があり、手を抜くことはないが、もっと頑張れるかもしれない。英司や湊を見てると、そう思えた。
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