6. そばにいる方法

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 結局、日付が変わるか変わらないかという時間までやって、二人して店長に帰されることになった。  ラストオーダーは終了したため、あとは店長がなんとかしてくれるだろう。  結構寒いね、と一緒に店を出た湊が体を震わせた。もうそろそろ十一月ということもあり夜は肌寒い。 「高梨くん、家の方向どっち?」 「あ、俺はこっちです」  と言ったところで、英司が迎えにくる、と言っていたことを思い出した。あの後返信できていないが来ているんだろうか。終わったことを伝えるべきか。 「残念、反対方向だ」  一緒に帰れると思ったのに、と湊が肩を落とす。  れっきとした男の人ではあるが、真夜中で一人帰すのは少し心配……と思ったけど、いつもは一人で帰ってるのか。  一応英司に連絡してから、と思ってその場に残ることを決め、千秋は湊に「気をつけて帰ってくださいね」と一応言った。 「心配してくれてるの?」 「そりゃ……」  白石さん綺麗だし、とはキャラじゃないので言えなかったが。 「高梨くんは優しいなあ。でも大丈夫!気をつけて帰るよ」  大丈夫!のところでぎゅっと拳を握って腕の筋肉を見せつけるようにしたが、細くてさらに心配になった。  そんなところで、じゃあ……と湊が帰ろうとしたとき。 「千秋、終わったのか」  湊と話していた反対方向から話しかけられて、聞き慣れた声に振り向いた。湊も同時に足を止める。 「柳瀬さん」 「連絡しろって言っただろ」  不満げに口を尖らせる英司に、やっぱ来てたのか、と思った。  嬉しいけど、こういうのってなんだか照れくさい。もしかして、結構待たせてしまったのだろうか。  しかし、この会話で湊に自分たちの関係がバレやしないかと思ったところで、 「英司……?」  湊が知らないはずの名前を呼んだ。 「英司、覚えてる?俺のこと」  切羽詰まったように、湊がぐんぐんと距離を詰めてくる。 「あの、知り合いですか?」 「……え、お前」  英司が何かに気づいたように、目を見開いた。  なに、なんだよその反応。  そして湊が目の前まで来ると、 「湊だよ。中学、同じクラスの」  と、心の底から喜んでいるのがわかるように頬を染めて微笑んだ。
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