6. そばにいる方法

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「……じゃあ、もう、ああいうことさせないでください」  自分も言いたいことを言おうとして、言葉のチョイスを間違ったことにすぐ気づいた。 「え……うん」  英司は嬉しそうにしながら頷いただけで、それが余計羞恥心を煽る。  ……完全に言い方間違えた。 「それで考えたんだけど、俺だけしばらくホテルに住むとか」 「えっ」  突拍子もない案に、思わず驚く。 「そこまでしなくていいです」 「でも」  そこまでさせるのは心許ない。  千秋が却下すると、「……ありがとな」と英司が眉を下げて笑った。  しかし、一番大きな懸念が千秋には残っている。 「あの、朝、白石さんに言ったんですか?……その、付き合ってるって」 「ああ、今お前と付き合ってるって言った」 「で、白石さんはなんて?」 「……んー、特には何も。へえって言ってたな」  じゃあ、湊はまだ英司に自分の気持ちを伝えていないのだ。そして、諦めない宣言。  英司は自分から離れていかないだろうと言い聞かせてはいたが、釣り合ってないとか湊に勝てないとか考えたせいでやはり不安は膨らむ一方である。  でも、湊が言っていない想いを千秋が勝手に英司に伝えるのは当然だめだ。  だから、やっぱりこれは我慢勝負なんだな、と思うしかなかった。  目の前でご飯を進める英司が、 「……やっぱり、心配か?」  と聞いてくる。言えない。言えるわけがない。 「……柳瀬さん、今日、したい」  代わりに、願望をぶつけることにした。 「えっ!」 「白石さん、今日遅くまでバイトだから……」  俯いたまま縋るように小さな声で言うと、英司がごくりと喉を鳴らす。 「……これ、食べ終わったらな」  そう言って、英司はさっきよりも早く箸を動かし始めた。  俺を求めて欲しい。柳瀬さんに求めて欲しい。  今取れる方法が、これしか思い浮かばなかった。
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