6. そばにいる方法

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 なんであんなこと言ってしまったんだ。我慢勝負なら完敗も完敗だ。秘めようと思っていた全てをぶちまけてしまった。それも、二人の前で。  穴があったら入りたい、ないからベッドに潜るしかなかった。家じゃなくて、どっかもっと遠くに逃げればよかった。  ……でも、英司がくることはないかもしれない。結局、湊が告白して、どうなったのか千秋は知らないまま飛び出してきてしまった。  だから最悪あの二人がくっついたなんてことも……そこまで考えて、ぽろっと涙が溢れた。  ……あ、まずい。  今まで我慢していた分と、さっきヒートアップしてしまったのも手伝って、ぽろぽろと涙が流れ出す。 「……う」  ティッシュ、と布団から出ようとしたところで、玄関のドアがガチャガチャなり出して、千秋はまたすぐ潜り込んだ。  どうしよう、英司だ。  すぐに入ってきた気配がして、千秋は逃げ場のないまま息を潜めるしかなかった。こんな顔、見られるわけにはいかない。 「千秋?」  部屋までたどり着いた英司の声が千秋を呼ぶ。返事はしない。 「隠れてるつもりか?バレバレだぞ」  そりゃ、隠れてるつもりなわけがないだろう。英司がベッドまで近づいてきたのがわかって、千秋は身を強ばらせた。  白石さんは?結局どうなった?色々聞きたいことはあったけど、今の状態じゃ顔を隠すことで精一杯だ。  でも、英司はベッドに腰掛けると、無理やり布団を引き剥がすこともなく話し始めた。 「……さっき、初めて好きって言ってくれたよな。めちゃくちゃ嬉しかったんだけど、あれ」  千秋は黙って聞く。 「でも、釣り合わないとか、白石に勝てないとか、ちょっと聞き逃せねえ。……だって俺は釣り合う人間とか、そういうんじゃなくて、ただ千秋が好きだからさ」  どきっとする。好きって言われることが嬉しくて安心するなんて、千秋は知っていたはずなのに。
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