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「白石のこと優しいとか素直とか言ってたけど、それは白石のいいところであって、そもそも千秋は俺のこと考えて色々してくれるし優しいだろ。それに俺は……千秋がいつも素直じゃなくて、たまに素直になるところがたまんねえの」
なんだそれ、と千秋は心の中で突っ込む。
ぽんぽんと布団の上から一定のリズムで叩く、英司の手が優しい。
「とにかく、俺は千秋がこうだから好きってわけじゃなくて、千秋だから好きなの。……だから、わかったら出てこいよ、千秋」
千秋は一度止まったのに、またぐすぐす泣いていた。
そんなこと、言われると思ってなかったのだ。これは悲しい涙じゃない。
顔を見せるのは嫌だけど、でもいい加減英司の顔が見たくなっていた。
うつ伏せのまま頭だけ出すと、英司が顔を向けるように頭を動かしてきた。
「……あーこんなに泣いちゃって。ごめんな」
「別に、柳瀬さんのせいじゃ……」
優しい声に、余計涙が溢れた。服の袖でどんどん流れてくる涙を拭く英司。
なかなか泣き止まないので、英司は千秋を布団から引っ張り出すと、壁に寄りかかって千秋を膝の上に乗せ抱きしめた。
「嫉妬しちゃった？」
……う、バレていたのか。
無言は肯定というように、千秋は答えず、顔をもぞっとうずめて誤魔化した。ぽんぽんと今度は背中を叩く手が心地いい。
「泣き止んだ？」
「はい……」
しばらくすると落ち着いて、涙も止まった。英司に正面から顔を見られ、ぱっとそらす。きっと、ひどい顔をしているに違いない。
「なんで隠すんだよ」
「だって」
「可愛いのに」
意味がわからない。
「とにかく、わかった？俺は千秋だけが好きなの」
「わかりましたから……」
だから、そう何度も言わないでほしい。今日の千秋の涙腺はバカになっている。
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