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「あの、俺……!」
そんなに知られたくなかったなら最後まではぐらかせばよかったのに、もう白状しないといけない、逃げられないと思ってしまったのは若さゆえか。
「お、俺……っ」
「うん」
告白なんてしたことないけど、何を言えばいいかくらいわかっているのに、肝心の言葉が出てこない。
「俺……っ、ぅ」
それどころか、なぜか泣きそうになる。というか、すでに涙目だったのか、ふっと笑った英司が高梨の頭に手を置いた。
「英司くん、」
「言えない?」
「い、言える……」
謎の意地を張りつつも、そんな千秋の頭を英司は優しく撫でる。
「でも、時間切れ」
「えっ」
そんな、元々言うつもりはなかったけど、もうここまでバレてるのに。最悪、明日から話せなくなるかもしれない。そんなのいやだ……!
それに、英司はあと半年で卒業なのだ。ここで言わなくていいのか、俺!
「英司くん、おれっ」
「俺は好きだよ、高梨のこと」
「……えっ?」
完全に不意を狙って出てきたその言葉。まさに、千秋が言おうとしていた言葉だ。
え?……今、好きだ、って言った?
聞き間違いか?英司くんが、俺を……。
「高梨は?今度は言えるよな?」
「っ……」
いたずらっぽく笑いながら言った英司は、頭に乗せられていた手を肩へ滑らせた。そして、そのまま千秋の体ごと引き寄せる。
え、だ、抱きしめられっ……
英司どころか、家族以外とこんなに密着したことがなかったから、沸騰するんじゃないかというほど体が熱くなった。
どうしよう。今までで一番、ドキドキする……。
も、これ、なんかだめだ、おれ……
千秋は無意識に英司の背中の服をぎゅっと掴むと、
「英司くん、好き……」
と、口にしていた。
「高梨……」
千秋の言葉に、英司は抱きしめる力を強める。
その後すぐコンビニに出かけた連中が戻ってきて、千秋は大変慌てふためくことになるのだが、英司はさすが、何もなかったかのように振る舞っていた。
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