6. そばにいる方法

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「はい、った……」 「よしよし、がんばったな」  褒められるようにそう言われると、またむずむずしてくる。 「ん……」 「おい、大丈夫か?」  動き始めようとする千秋に気づいて、英司ができるのか?と心配そうな目を向けてくる。  失礼な、完全に知らないわけじゃないし、できるはずだ。  そう思って、自分の知識を総動員させて動いてみる。 「ん……あ」  じれったい。  じれったいのが嫌で上に乗っかったはずなのに、余計じれったい。  ゆるゆる気持ちいいけど、いつもみたいな英司がするときの刺激を得られないのだ。 「う……やだ……っ」 「今日は素直だけど、いつもに増していやいやだな」 「だって、柳瀬さんが」  動いてくれないから、と言おうとしてやめた。上に乗っかったのは自分だ。  とは言っても半泣き状態の千秋に、英司は、 「どうしてほしいか言ってみ?」  と、意地悪モードを発動してきた。  普段絶対に言わないようなことを、こういうときを狙って言わせるのが大好きなのだ、この人は。  でも、これ以上自分で自分を焦らしてどうする。はやく、柳瀬さんと気持ちよくなりたい。 「柳瀬さん、う、動いてほし……っ」  顔を上気させ、息荒くだらしなく口を開けて英司を欲しがる自分を鏡で見たら、きっと卒倒してしまうだろう。  でも、柳瀬さんだけならいい。だって、 「よく言えました」  こんなに喜んでる。  動いてくれる気になったのがわかって、思わず中をきゅっと締め付けると英司の顔が歪んだ。  そして、そのまま一気に突き上げられる。 「んあぁっ!」 「きっつ……」  押し上げられるように大きな声が出た。動いてとは言ってもいきなりだなんて、でもそれが恐ろしく千秋の欲しいところを当てていく。どんどん早くなる律動に千秋の声は大きくなるばかりだ。よかった、隣が柳瀬さんの家で。  でもなんとか声を抑えようと指を噛むと、「こら」と両手ごと絡み取られてしまう。繋がっている手が熱くて、溶けてしまいそうだった。 「あっ、あ……柳瀬さんっ」  何度も何度も下から揺さぶられて、ほしかったのはこれだと言わんばかりにきゅうきゅう締め付けて英司を離さない。 「千秋……っ」  もっと密着したくて体を英司の方に倒すと、自らキスをして英司の舌をねだる。英司は千秋の全てを受け入れるように優しく体を抱いて、お互いだけを感じられるキスをした。 「んんっ……はあっ」  どこもかしこも英司で、英司のことしか考えられなくなったとき、千秋はもうすぐに限界が訪れるのを感じとった。このまま英司の腕の中で、ただ英司だけを見て感じて達してしまいたい。 「はっ、う……も、だめっ……」 「いって、千秋」 「いっちゃ、あ……あっ……!」  力強く抱きしめられながら千秋はビクビクと体を震わせて達してしまうと、英司は頭を撫でてくれた。  幸せな心地が身を包んで、身体中が浮くような感じがする。ずっとこのなかで漂っていたい。 「可愛い」  達する千秋に、英司はいつもそう言う。  こんなぐちゃぐちゃで、ただ快感に善がってるのが可愛いのか?と毎回思う。でも、英司が自分で気持ちよくなっているのを見ると嬉しくなるから、それと同じなのかもしれない。  少し経ったところで、今度は英司がいくまでまたゆさゆさと揺られた。  そして英司が達すれば、いつもの千秋ならここで終わろうとする。……英司に続行されることがほとんどだが。  しかし、今日はそうしているうちにまた欲しくなってきてしまった。どうしよう、まだまだ足りない。まだまだ英司が足りない。持て余した熱がじんじんと疼きを取り戻していく。 「柳瀬さん、もう一回……」 「………………まじか」  ティッシュを持ってこようと動く英司を遮るようにまた上に乗ると、英司は色々溜めた末にそう言った。  でも、もうわかる、これは喜んでいる。そしてやっぱりまた、今度はさっきよりも激しく千秋を抱いた。たまには素直もいいかもしれない。  こうなれば、良循環か悪循環か。  いつの日かは三回連続で限界を感じたというのに、この日は千秋がねだったおかげでそれ以上に互いの体に溺れることとなった。ずっと、お互いがお互いであることを感じていた。
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