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番外編
「酒、飲んでみるか?」
英司はすっかり隣に座るのが普通になった千秋にそう言うと、彼は顔に出してないつもりかもしれないがキラキラと目を輝かせた。
十二月十五日。今日は千秋が二十歳を迎える日だ。
中学時代を含めて恋人として誕生日を祝うのはこれで二回目だが、再会してからは初めてだ。昔とは違ってできることも増えた。
だから何か特別なことをしたいと思ったのだが、千秋は普通でいいと言う。それより、家で一緒にいたいのだと(直接は言っていなかったが)。
午前のうちに千秋の家に行って、プレゼントを渡して、昼ごはんを食べて、まったりして。夜ご飯は家で食べようということで一緒に買い物に行って、やっぱり千秋の大好物をたくさん買った。
そんなに食べられないです、と口を尖らせていた千秋が愛おしい。結局全部食べてしまうくせに。
当たり前のように千秋が横にいることが幸せだ。買い物の帰り道、英司はしみじみ空を仰ぎたい気分になった。
それに、千秋の望み通りにまったりゆったり過ごす誕生日もいいものだ。千秋はこういうのが好きなんだな……と、いうのはもちろんわかっていたけど。
ぱんぱんに膨らんだ袋にはいつもは買わないあるものが入っている。
それは、酒だ。千秋と一緒に飲むための。
もちろん、初心者にガバガバ飲ませるわけにはいかない。これでも医者志望だ。
でも、ほっといてもいつか千秋は酒を飲むことになるだろう。だから初飲酒は自分とにしてほしいのだ。
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