番外編

4/7
前へ
/152ページ
次へ
「千秋、もう眠いなら寝る?」 「全然眠くないです」  たしかに眠くはなさそうだ。 「柳瀬さん、いつもみたいにして」  言われると、ドキッとした。いつもみたいにってどれのことだ。  千秋は英司の腕を掴んだと思ったら、それを自分の腰に回わすようにして動かす。 「ちゃんと力入れてください……」  うそだろ、と思っていると睨まれてしまった。  いつも邪魔とでも言わんばかりなのに、こうやって腰を抱かれるの好きだったのか。 「わかった。これで満足?」 「……まあまあですね」  いつものように抱いてやると、そう言いながらもまた身を預けてくる。訳すならば、大変満足だということだ。  ……あー、そろそろ本当にまずい。自分で仕掛けたことだけど、萌えを通り越してやばいかもしれない。 「柳瀬さん、今日、楽しかったです」 「ん?」  英司に寄りかかりながら、改まって千秋が言い出した。 「誕生日、一緒にいれて……祝ってくれたの」 「……千秋が嬉しいなら俺も嬉しい」 「……うん」  少し微笑んだ千秋を見て、英司も胸がいっぱいになった。腰を抱く腕に力がこもる。  途端、千秋がぎゅっと服を掴んできた。 「柳瀬さん……」 「どうした?」  少し息が荒いような気がして、急いで千秋の顔を確認する。酒で具合が悪くなったのかもしれない。 「……たい」  千秋が何かつぶやいた。 「なに?」 「したい……」 「……え?」 「だから、えっちしたいっ……」  眉を下げ切って真っ赤な顔で言われたセリフに、英司は一瞬何を言われたのかわからなかった。しかし、理解が追いつくと英司はぎゅーんと血が沸騰するような思いになった。  ……うそだろ、えっちとか、そんな単語言ったことなかったじゃないか。  ごくりと喉を鳴らしている間に、千秋が膝の上に乗っかってきて正面から目が合う。  ……あーもう、俺の好きな可愛い顔してるし。 「今すぐ、して……」  これ以上えろくなってどうするんだ。ほぼ命令形なそれに、英司は興奮せざるを得なくなった。  千秋、やっぱりお前は今後一切俺以外と酒を飲むのは禁止だ。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1332人が本棚に入れています
本棚に追加