2. 流されるな

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2. 流されるな

   五月も下旬。大学に来ていた千秋は、二時限目から授業を受けていた。  これでも普段は教師を目指す教育学部生。基本真面目な俺は、やるべきことはしっかりやる。  急に、隣の席に座る鈴木拓也(すずきたくや)がうなだれるように机に突っ伏した。拓也は同じ学部の友人で、入学式に話しかけられて以来、こうして行動を共にすることが多い。 「なあ千秋、行こうぜ合コン、合コン〜」 「何言ってんだ授業中に」  そう言った拓也は最近二十歳になったというのに駄々をこねるガキみたいだ。千秋はまだ誕生日がまだなため、19歳だが。  ふと恨めしき隣人のことを思い出した。あれからまたしばらく会っていない。俺は合コンなんか行ってる場合じゃないんだ、早急に引っ越しを計画しなければいけない。まあ、物件探しの時点ですでに躓いてるけど……。  授業が終わって、食堂に向かうために教室を出ると、一度は黙った拓也がまた合コン合コンと騒ぎ始めた。どんだけ飢えているんだか。 「行かないっつの。拓也お前、酒飲んで潰れるし」 「じゃあ飲まないから!お前来ると女の子も盛り上がるし」  四月に誕生日を迎えると、味をしめたように酒を飲むようになったこの友人は、飲むと色々と面倒臭いのだ。一ヶ月で十分に思い知った。  食堂に着くと、うどんの券を買う。ここのうどんは安くて美味しい。拓也はがっつりカツカレーを頼んだらしい。 「お前最近付き合い悪いよな。はっ、もしや俺を差し置いて彼女を……?」 「違うから!ただ……」 「ん?」 「……いや、なんでもない」 「なんだよ、どうしたー?悩み事?恋の悩み?」  完全に口を滑らせた。こうなると拓也はしつこい。でもそういや、こいつも一人暮らしだったっけ。全部話すわけではないが、少し相談するくらいならありかもしれない。  とりあえず、すぐ出てきたうどんとカツカレーを受け取ると、そのまま近くの席に座った。
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