2. 流されるな

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「実は、アパートの隣人と、ちょっと……」 「なに、隣人トラブル?一人暮らし始めたばっかなのに大変だな」  カツカレーをガツガツと食べながら憐れまれる。 「い、いやそこまでじゃないけど。でも引っ越そうと思って新しい部屋探してるけど、見つからなくて」 「え、でもお前引っ越したばっかりだろ?」 「俺だってまたすぐってのはどうかと思ったけど、そうするしかないんだよ」 「へえ、そういうもんか。まあうちのアパートはかなりおすすめだけど、空きがあるかはわかんねーなぁ」  大抵そういうところは運が良くなければ空きはない。やっぱりだめか。  少し残念がっていると、拓也は「うーん」と考える素振りをした。千秋は千秋でようやくうどんに手をつける。やっぱりここのうどん、うまいな。 「その隣人、結構アレな感じ?」  アレな感じ、か。千秋はやつの顔を思い浮かべると、乾いた笑いをこぼした。なんたっていきなりキスしてくるやつだ、次会ったらどんな目に合うか。 「はは……まあ……。アレな感じだな」 「なら、次の家見つかるまでうちに来るかー?」 「えっ、いいのか?」 「おうよ」  カツカレーを食べながら、拓也はなんでもないように言う。  考えもしなかった。その手があったか。いやでもいいのか、そんなこと。普通に迷惑だろ。いくら相手が拓也とはいえ、一方的に迷惑はかけられない。 「あ、お前また遠慮してんだろ。いいんだぞ、俺、お前に飯作ってもらうし。あっ!あと合コンにも来てもらうからな」 「拓也……」  俺には今、お前が神様に見えるよ……。
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